すい臓ガンを患った夫へのターミナルケア

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東京都  K・Hさん(69歳、女性)

〔夫がすい臓ガンと診断される〕

 平成21年3月ころ、夫の右側の腰部が痛み出しましたが、過去にも度々、ぎっくり腰や腰痛を経験してきましたので、その内に回復するだろうと安易な気持ちでおりました。
 6月19日、自宅近くで毎年健康診断を受けているT医院より、血液検査で肝機能の状態を表すGOTの数値が268IU/L、GPTが166IU/L、さらにγGTPは1,628IU/L(いずれも正常値は40IU/L以下)を示しており、異常に高いからすぐ来るようにと連絡が入りました。6月22日にエコーとMRIの検査をしたところ、「すい臓に腫瘍があり、黄疸も併発しているのですぐ大きな病院で精密検査をするように」と言われました。子どもたちと話し合い、「これからはお母さんが一番大変になるんだから、近い所がいいと思うよ」と言われ、近くの大学病院を選びました。その病院は娘が3年間医療事務で勤務をしていましたし、当時、MOA健康生活ネットワークで一緒に活動していたSさんが看護師として勤務していたからです。
 6月26日に大学病院の予約をしていましたが、夫は自分の病気が納得できないと、再度T医師に説明を求めたために、その日は大学病院には行きませんでした。
 翌日に受診したところ、担当医から「今日で良かったです。私はすい臓の専門ですから」と自信に満ちた力強い言葉をいただき安堵しました。この日は土曜日でしたので、二男も二女も付き添ってくれ、隔週しか診療日のないすい臓専門の医師、看護師はSさんが担当してくれました。
 腫瘍マーカー、胃X線検査、X線CT、MRI、超音波などのスクリーニング検査と組織検査が行なわれ、そのまま入院することとなりました。検査結果はすい臓ガンとの診断でした。
 黄疸症状が激しかったので、内視鏡を鼻から喉に通して胆管につなぐステントの手術を受けましたが、麻酔から醒めた時に「看護師のSさんの顔が見えたので大変心強く感じた」と夫は言っておりました。その後、1ヶ月間は黄疸の治療を受け、ビリルビン検査の数値が11mg/dlから1.9mg/dlに下がったので、7月26日に一時退院をしました。

〔夫があるがままで余生を過ごす決意をする〕

 退院するまでの間にすい臓ガンについて、様々なつらい検査が行なわれました。担当医から「今なら手術ができるよ」「何もしなければ正月は迎えられないよ」と説明されました。また、今後の進め方として、「手術を行う場合」、「化学治療を行う場合」、「何もしないで在宅で余生を過ごす場合」、それぞれの治療の説明を受けました。
 夫は手術をすることに気持ちが動かされていましたが、普段から細身の夫の体重が42㎏から、6月19日の検査時は37㎏、その後は35~36㎏まで減っており、回復できる体力があるのか家族内に不安がありましたので、セカンドオピニオンとしてガン治療に詳しく、夫婦で信頼を寄せているMOA高輪クリニックのN医師の診察を予約し、退院中の7月30日に長男の運転する車で行きました。
 N医師は、丁寧に聞いてくださり、すい臓ガンのこと、また手術や抗ガン剤治療について詳しく教えてくださいました。そして痛みが出てきたら我慢せず、免疫力を低下させないためにも痛み止めを上手に使用することなどを指導され、また個人的アドバイスとして1日3時間半以上の浄化療法を受けるように勧めていただきました。夫も不安に思っていることや疑問点を質問して納得でき、安心したようでした。
 帰宅して、夫とじっくり時間をかけて話し合いました。子どもたちの意見もよく聞き、最終的には夫が手術も抗ガン剤も使用しないで、余生を過ごすと決断しました。

〔岡田式健康法を取り入れる〕

 夫は岡田式健康法を徹底してもらいたいと希望しましたので、家族も協力して取り組むように努めました。健康生活ネットワークのみなさんに協力をお願いしてみましたら、真夏の暑い中、病院や自宅まで足を運んでくださいました。たくさんの方々から浄化療法を受けることで、入院当初よりも背中の痛みが軽減していきました。特に専任療法士が来てくださるのを楽しみにしていました。それは、浄化療法の原理や浄化作用などについての質問ができましたし、浄化療法の効果を実感することができたからです。
 夫の症状は、胆管ステントが詰まると発熱し、黄疸が出て、食欲の減退、脱水症状になるので、ステントを取り替えるための入院を4回繰り返しましたが、痛み止めもモルヒネも最後まで使用することなく、浄化療法と自然食(入院中は病院の許可を得て、自然農法米のおかゆを届けました)、お花を飾って癒しの環境を整え、少しでも免疫力が高まることを願い、進めることができました。
 9月12日、黄疸の症状がひどいので、ステンレス製の太いステントに入れ換える手術を行いました。9月17日に退院し、在宅介護に切り替えました。6月27日の入院以来、つらい検査や治療が続いた夫も、退院からの20日間は毎日食べたい物をリクエストでき、大勢の方々から浄化療法の施術や暖かい励ましの言葉をいただき、心安らかな幸せな時間を過ごせたことと思います。

〔患者の立場に立てる医療関係者は患者の生きる希望〕

 在宅介護に関わるいろいろな方との出会いがありましたが、特に有り難かったのは患者の意志を尊重してくださる素晴らしい医師や看護師さんと巡り会えたことでした。在宅介護を進めるために、医療事務をしていた娘から、「市の地域医療支援センターに相談してみたら」と言われ地域医療支援センターからケアプランセンターを紹介していただきました。ケアプランセンターから、在宅のターミナルケアに対応してくださる医師の紹介と、看護師さんを派遣してもらいました。
 お2人とも亡くなる1週間前の短いお付き合いでしたが、最初に「宗教は持っておられますか?」「どんな治療を望んでいますか?」「今、何をしてもらいたいですか?」と患者の話をじっくりと聞いてくださり、こちらの希望を受け入れて診療され、介護のアドバイスもいただけました。夫が低い声で一生懸命、浄化療法を受けると痛みが取れるのだと話すので、私は岡田式健康法のパンフレットなどを見ていただきました。看護師さんも細かい所まで気がつかれ、患者の立場になって対応してくださり、患者に生きる希望を与えてくださいました。
 10月5日、脱水症状で昏睡状態になり、看護師さんの必死の努力で、入らなかった点滴が入り、駆けつけてくださった医師によって喉の洗浄をしていただき意識が戻りました。「何の苦しみもなく、スーッと意識がなくなっていったので、そのまま行きたかった」が夫の言葉でした。その夜は一番気がかりな長男のこと、葬式のこと、家の相続のことなど、夫の遺言とも言える会話ができました。
 翌朝、夫は看護師さんに「あなたと話ししていると死を忘れてしまうほど、元気をいただけるよ。素晴らしい人ですね」と感謝の言葉を伝えることができ、私も同感だったので、本当に嬉しかったです。ネットワークの方が浄化療法の施術に来てくださった時にも「度々ありがとうございます」と、夫はみなさんにお礼の言葉を述べていました。

〔最後を看取る〕

 10月7日、この日はたくさんの方から浄化療法を施術してもらうことができました。その中で、UさんとOさんから、自然農法で栽培した、採れたてでみずみずしい人参をいただき、願っていた人参ジュースを最後に飲むことができました。その味は甘くてやわらかい人参の香りに満ちていて最高の味でした。
 みなさんがお帰りになってから30分ほど経過して、夫の意識がなくなり、すぐに医師をお呼びしました。駆けつけてくださった医師は、「ご主人は立派に生きられましたよ。最後の時を静かに看取らせていただきましょう。みなさんのやっている浄化療法も功を奏しましたよ」とおっしゃってくださり、それを伺って、私も気持ちを落ち着かせることができました。それから1時間位して、夫は静かに、眠るように旅立って行きました。その時、不思議にも甘いくだものようなの香りが漂っていました。
 私の周囲で複数のガン患者さんを知っていますが、みなさん激痛に悩まされておられます。中には痛み止めも効かずに苦しまれて、接する家族もつらいということを伺いますが、夫は最後まで痛み止めの薬を服用することなく人生を全うすることができ、この点、岡田式健康法を取り入れて本当によかったと思いました。
 話好きの夫でしたが、専任療法士や健康生活ネットワークのみなさんは、気持ちよく話を聞いてくださり、それが夫にとっては自分の歩んできた人生を認めてもらい、また自分の存在を認識することに繋がったようで、とても嬉しかったようです。
 さらに、最後の20日間を家で過ごせたことは、私たち家族にとって本当に充実した時間だったように思います。家からの見慣れた景色を眺めながら、家族と会話することもできました。床に伏せていながら、家族の声を聞き、私が料理を作っていれば、その匂いを嗅いで、「今日の料理は○○だね」と、日常の何気ない一言から会話が始まるのです。私たちの人生を凝縮した、充実した日々だったように思います。
 日に日に体力が衰えていく夫を目の前にして、私たち家族は少しずつ気持ちの整理をつけることもできました。短い時間でしたが、精一杯の看取りができました。

〔家族の絆が深まる〕

 夫はある大手自動車製造会社のエンジニアとして職を全うし、退職後は、社会情勢に興味をもって、パソコンや読書に親しみ、また家庭菜園なども行っていました。また健康生活ネットワークで行っている地域のボランティア活動に対しても、運転手役を務めてくれました。
 今回の夫のケアでは4人の子どもたちが各々の個性特徴を発揮し、きょうだいで話し合い、お互いの立場を理解しながら、私を支えてくれました。同居している長男は、今まできょうだいとの交流を望まなかったのですが、「お父さんはきょうだいが仲よくするのを一番望んでいたんだよなぁ」と素直に自分の思いを吐露し、これからは長男を中心に連携し合おうと、きょうだい間の絆を深めることができました。二男は「お父さんは、この細身の体で家族を養い、4人の子どもに教育を受けさせてくれたんだね。心から感謝しているよ」と言ってくれました。
 さらに、4ヶ月の間、健康生活ネットワークのみなさんのお祈りと真心のこもった浄化療法を受け、暖かい励ましのお言葉やお力添えをいただき、私たち家族がどれだけ支えられてきたことか、心から感謝しています。夫はもちろんですが、疲れた私を心配して浄化療法の施術や、さりげなく「今日は何か買い物ある?」と声をかけていただくなど、ネットワークのみなさんに支えていただきました。
 振り返れば、私たち夫婦で歩んできた人生の一つひとつが鮮やかに思い出されます。日々の生活の中で、いつも夫の気配を感じ、肉体はなくとも、魂はともにあって人生を歩ませていただいていると確信しています。

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