健康と幸せを得る料理教室 -食育指導士の資格を活用して-

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奈良県  Y・Eさん(60歳、女性)

〔わが家で料理教室を始める〕

 私は中学生のころから食に関心があり、いろいろ工夫して調理することが大好きでした。
 今から30年近く前になりますが、体に良い食材を扱っているお店があると聞いて、MOAポワルショップを訪ねてみました。そこでは自然農法で生産された野菜や加工食品が売られていました。以来、わが家の食卓に自然農法の食材は欠かせない大切なものになりました。
 平成16年、ご近所の若いお母さんに料理の話をしたことがきっかけとなり、わが家で料理教室を行なうことになりました。
 料理教室の参加者は30代でお子さんは小学生という方が多く、共働きの生活をしておられる現状から、調理することに興味はあっても、忙しい中で中食などを取り入れた料理が多いということでした。食材選びでは経済面を重視して食材を選択しておられました。また、そのような状況で「食」の意義やあり方について考える機会もあまりないと伺いました。
 そこで、ただ単に料理を覚えればよいということではなく、この料理教室では岡田式健康法食事法を取り入れ、家族の健康を考えた「食」が幸せな暮らしの基盤となっていくことを一緒に学べるように心がけました。

〔楽しんでもらいながら食事法を体験できる料理教室に〕

 料理教室が近づいてくると、“今回はどのような献立にしようか”、“みなさんに楽しんでもらいたい。家族に喜んでもらいたい”、“帰ってからも必ず失敗なく作れるように”と思いながら、ちょっとしたアレンジを加えたレシピを考えます。前日は食材などを揃えるとともに、参加者の顔ぶれを思い浮かべながら“明日は、誰に何を担当してもらおうか”などと頭の中で予行演習をしてみます。
 料理教室は10時ごろから始めます。はじめに岡田式健康法の食事法としての5つのポイント(具体的な内容は以下『』内の文章です)を説明します。続いて献立メニューのレシピをみなさんと確認し、それぞれの分担を決めて調理を始めます。メニューは4品位で、そのうち1品は必ずスイーツを用意します。
 食事法では、『生命力あふれる食材選び』として、「鮮度のよいもの、旬のもの、地元で生産されたものをできるだけ選ぶことが大切なのよ」などとお話し、料理教室では必ず自然農法で生産された食材を使用しています。
 普段は5~6人で行っていますが、多い時には10人位になることもあります。わが家は比較的作りが広く、参加者はキッチンとダイニングに分かれて担当した調理を楽しく作ります。
 調理が終わるとみなさんと一緒に、今日の料理にあった食器を選び、テーブルにランチョンマットを敷き、お花をかざって、料理を盛りつけ、セッティングは終了です。

〔食を通して参加者同士のコミュニケーションが進む〕

 参加者そろって料理を食べますが、「アレンジの仕方や一工夫で料理が見違えるほど美味しくなるわ」「今日のレシピをほかの料理にも応用できるかしら」などと、自然に会話も弾みます。また、『食べる物や作る人(生産者など)に感謝して食を楽しむ』ことをみんなで考えながら、家族そろって食事をするように努めることや、「いただきます」や「ごちそうさま」の挨拶の大切さなどが自然と会話されます。
 それから『うすあじに心がける』ことや『米などの穀物や野菜を多く摂ること』、また『食事と運動のバランスに気をつける』ことで、家族の健康を管理し生活習慣病などの予防につながることなどを話し合います。
 雰囲気が良いからか、普段では言えないような家族のことなども、参加者で話し合っているうちに前向きに受け止められるようになったりと、大いに気分転換が図られているようです。
 朝からみなさんとワイワイガヤガヤとやっていますので、その様子が家の外にも漏れて料理教室が終わってから、「今日は何がありましたの?」と近所の方からたずねられたりします。
 私も、好きな料理を通して若いお母さん方に接することで、エネルギーをもらって若返っていくように感じています。若い世代の方々に食が健康の源であり、食を通して家庭が円満になることを実際に体験し身につけてもらえることを嬉しく思います。

〔先生と保護者に心の通い合う豊かな食生活の大切さを伝える〕

 私は平成20年9月からS中学校の評議員*1を務めることになりました。
 (※平成12年1月の学校教育法施行規則の改正により、地域住民の学校運営への参画の仕組みを制度的に位置付けるものとして学校評議員制度が導入され、同年4月から実施されています)
 3つの地域から評議員が選出されて、校長先生を中心に教頭先生も加わって、学校運営や行事などが報告され、懇談する会合が定期的に行なわれます。
 初会合の時、校長先生から「どのようなことでも結構ですので、気づかれたことや思っておられることを仰ってください」と言われました。それで、食育についておたずねすると、校長先生から、「進めていかねばならないが、充分な取り組みにはなっていません」というお返事でしたので、機会があれば食の大切さをお伝えしたいと述べました。
 すると、校長先生は「ぜひお願いしたい。教職員の先生方にお話してもらえないか」と言われ、早速10月に教職員対象の食セミナーを開催することになりました。
 私は料理教室をやってきた中で、財団法人日本食育協会が認定している「食育指導士」の資格を取りました。しかし、こんなにあっさりと決まるとは思っていませんでしたから、初めてのセミナーをどのように進めようかと食に詳しい方々にアドバイスを求め、また書籍や様々な資料に目を通して準備を進めました。
 食セミナーでは、料理教室で進めてきた食事法の5つのポイントを柱に、地産地消を基本とした自然の摂理に適った食文化を大切にし、心が通い合う豊かな食生活をすることで家族の健康づくりや円満化に繋がることなどをお伝えしました。
 初めての講師役に緊張して、自分としては充分なセミナーができず、せっかく大切な時間を割いて聞いてくださった先生方に申し訳ないことをしたように思っていました。それを察してか、校長先生は、事前にテーブルにいけた花を眺めて、「準備から大変でしたね。帰ったら一輪いけてみます」と労ってくださいました。
 しばらくして、校長先生から連絡をいただき、「PTA総会の後に食セミナーをしていただけますか」と言っていただいて、思いもよらないことに大変驚きました。
 平成21年2月、第2回目の食セミナーはPTAの保護者38人が参加され、無事行なうことができました。
 
*1 学校評議員=平成12年1月の学校教育法施行規則の改正により、地域住民の学校運営への参画の仕組みを制度的に位置付けるものとして学校評議員制度が導入され、同年4月から実施されている。

〔かんさい健康センターのアドバイスを受けて健康な身体づくり〕

 食セミナーをするようになって、講師が健康で幸せでなければ、説得力がないと思い、一度、私自身の健康状態も確認しておく必要があると思うようになりました。
 そこで、MOAかんさい健康センターに足を運び、「健康増進コース」を受講し、健康診断の検査結果から、T医師は特にコレステロールが高いことを心配されました。併せて、岡田式健康法についてもアドバイスをいただきました。特に「食事と運動が大切ですよ」と言われましたので、管理栄養士さんにもアトバイスを求めました。
 新鮮な野菜をしっかり摂っていましたし、食事はきちんとやっているつもりでしたが、自己流になっていて、油ものや間食が多いことがわかりました。
 それからの1年間、岡田式健康法の実践に一層真剣に取り組みました。特に、食のコントロールとともにいつも万歩計をつけてできるだけ歩くようにしました。おかげでコレステロール値も40mg/dl程下がり、体重も6~7㎏落とすことができました。
 友人から「変わったわね」と言われるたびに嬉しくなります。

〔「健康づくり推進協議会」における食セミナー〕

 平成21年4月から、村の「健康づくり推進協議会」の会長を引き受けることになりました。
 健康づくり推進協議会の役員会は健康づくり課が窓口となり毎月開催されます。会合では職員の方から村民の健康づくりに関わるイベントなどの提案や報告が行なわれますが、必ず「何か提案はありませんか?」と私たちの意見を聞いてくださいます。
 何度目かの会合の際、私は思い切って食セミナーの開催を提案してみました。すると、「それはいいことだ。役場でチラシも作成し、募集も行いますのでやっていただけませんか?」と仰っていただけました。ほかの役員さんも賛同していただき、健康づくり推進協議会の年間行事の中に食セミナーと料理教室が組み込まれることになりました。
 事前準備として、近隣の都市で開催された食セミナーに参加しました。そしてMOA健康生活ネットワークのみなさんと冊子「科学する食育」(発行先:東方書林)を開いて、岡田式健康法の食事法について勉強しました。また、MOAかんさい健康センターで開催された食セミナーにも参加し、その時の資料も活用しました。
 平成22年2月1日に、健康福祉センターで、協議会の協議員43人中21人が参加される中、食セミナーの講師をつとめました。 当日は、ポストハーベスト*2に関する映像も活用しました。家族の健康を預かる主婦として食の安全性への意識をもって食材を選ぶことや、生命ある食物をいただくという感謝の気持ちや、食を通して相手を思いやる心の大切さなどを意識して、1時間半のセミナーを行いました。
 参加された方々からは、「食品添加物やポストハーベストの使用状況を知り、今後はそういったものを摂取しないように気をつけていきたい」「鮮度にもこだわり無添加の食材を選ぶ」「なるべく手作りに心がける」「料理には手間隙かけ愛情を注ぐことも大事だと学んだ」「脂肪の取り過ぎに注意する」「野菜をしっかりと食べる」「多少は値段が高くとも国産のものを食べる」「バランスよく食べる」「食も運動も大事」「継続してもっと食に関していろんなことを学びたい」「一般村民に対してもセミナーを行うべき」などの声をいただくことができました。
 その結果、10月に予定されている第2回目の食セミナーは村民を対象に進めていくことが決まりました。
 
*2 ポストハーベスト=収穫後の農産物に使用する殺菌剤、防かび剤などのこと。日本では収穫後の作物にポストハーベスト農薬を使用することは禁止されているが、海外からの輸入農産物には使用されているケースが多い。

〔健康で幸せな家庭づくりを願う料理教室〕

 料理教室や食セミナーを続けることで、私自身、食を見直す機会となりました。そして家庭での取り組みや自らの体験がセミナーでは一番説得力を持つことを教えられました。
 私は4人家族ですが、調理をはじめとした家事の一つひとつに心を込めていくことで、家族も充実した毎日を送ることができているように思います。
 料理教室で作ったお料理は必ず家族にも食べてもらいますが、「これは美味しいね」などと会話も弾みます。
 夫は美味しいと思った料理のレシピを勤務先で女性職員に配っていますが、「好評だったよ」などと話してくれます。たまに家にいる時は食材の買い出しを手伝ってくれ、行事の送迎などもしてくれるのです。最近は話題が多くて、その分、夫婦の会話も以前より増えました。健康増進セミナーの様子も伝えますが、なにごとも真剣に聞いてくれる夫の優しさに心から感謝しています。
 これからも家族の理解と協力を得て、食セミナーや料理教室を益々充実させていきたいと願っています。

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